導入
パウロが新しい宣教地であるアテネにおいて思いがけない形で伝道の機会を得るのでありました。パウロが福音を語ったことによって直接的に伝道の成果がでたかはわかりませんでしたが、福音が異教文化の中でどのように広まっていくのかを知ることの出来る箇所であります。
ポイント
今日もいつものようにポイントを2つあげたいと思います。1つ目のポイントは「イエスさまが私たちの救い主であることを信じていこう」ということと、もうひとつのポイントは「イエス・キリストの福音が日本にも伝えられたことを感謝しよう」ということを思いながらみことばを見ていきたいと思います。
解説
アテネは、ギリシヤの文化的中心地であり、古代世界の学問と芸術の中心地でありました。パウロ自身、アテネに来る前からこの町がどんなところであったかを聞いて知っていたと思いますが、実際に街中を歩いて見ていると、ギリシヤ文化の素晴らしさに圧倒されるよりも、町の至る所にある偶像を見て心に憤りを覚えるのでありました。
ネロの時代、アテネには3000体以上の彫像が公の場所におかれ、また個人の家の壁の中には無数の小さな像もあったようで、アテネに住んでいる人よりも偶像の数の方が多いとされていました。
パウロは憤りを覚えながら、いてもたってもいられなくなり、いつものように安息日にはユダヤ人の会堂へと出かけていき語り合い、また平日には広場でも論じ合い、イエス・キリストの苦難と死と復活について語るのでありました。
パウロが広場で議論しているとエピクロス派とストア派の哲学者たちもやってきてパウロと議論するのでありました。
エピクロス派は、物質主義的であり、神々の存在を信じないか、あるいは信じていても世からかけ離れた存在なので、この世界には影響を与えることはないと考え、また苦痛や恐怖から解放されるために思うままに快楽を求めていたようであります。つづいてストア派は、汎神論的神観を持ち、宇宙を成り立たせる内在的原理によって人間は生きるべきだと考え、倫理的な生き方によって満ち足りて生きていくことが出来るのだと考えていたようであります。
エピクロス派やストア派の哲学者たちは、パウロが話していることを聞いて侮辱するかのように、「あいつはただのおしゃべりではないか」と語るのでありました。このおしゃべりという言葉は、もともと鳥が種を拾うことから何でもかんでも情報を拾い集めるという意味であり、ムダな知識ばかり蓄えている人をさして使われ、無知な目立ちたがり屋とか、自分の知識をみんなに伝えたいと思っている人とか、口先だけのことを主張するインテリといったような意味があるそうです。
パウロはイエス・キリストの苦難と死、葬りとよみがえりを語ったことによって、思ってもみなかった反応によって屈辱を受けることになり、またそれだけで終わることなく、今度はアレオパゴスに連れて行かれることになったのであります。アレオパゴスとは、広場とか市場を見下ろす丘という意味で、最高裁判所といったようなところで定期的に評議会が開かれていたところであります。
パウロは思いがけず公の場で、大勢の人がいる前でイエス・キリストの福音を語る機会が与えられたのです。実際に、そこに集まってきた人々は純粋に福音を聞きたいと思っていたのではなく、どちらかと言えば、パウロを冷やかすために、侮辱するために集まっていたのではないかと思いますが、ギリシヤ哲学の教えが広まっている異文化の中で、神々の偶像が満ちている異教徒の中で福音がどのように広まっていくかを見ることになったのであります。
適応
今日のこの箇所を読んで思わされることは、今の私たちが生かされている日本にあてはまることが多いのではと思わされました。
日本には至るところにいろいろな物が神としてまつられており偶像の満ちあふれており、哲学ではないけれども日本の○○主義によっていろいろな教えが広まっている。聖書の話し、キリスト教の教え、イエス・キリストの福音などを語っても、何か新しい発見があるのならば聞いてあげても良いよといった空気がある。
このようなことを考えると、今日のこの箇所から、パウロがアテネにおいて行った宣教から、私たちの今の日本における宣教の突破口を見つけることが出来るのではないかと思います。
私たちの罪を赦し、救いへと導くために、十字架にて死んでくださったお方が私たちの神さまであるのです。最高の謙遜を持って私たちに仕えてくださるお方が私たちの主であるのです。
このお方と歩むとき私たちは必ず神さまの守りと平安の中を歩むことが出来、永遠のいのちが保証されているのであります。
今日このとき、イエスさまが私たちを救ってくださったことを感謝し、主の御名をほめたたえようではありませんか。そしていまのこの日本にも福音が届けられたことを感謝して、このイエス・キリストの福音がさらに広まっていくことを信じて歩んでいこうではありませんか。